【雪が多い地域でも太陽光発電ができる?】長野県での取り組みをご紹介
こんにちは。今回は、雪が多い地域にお住まいの方にとって関心の高い「住宅への太陽光発電システム導入」について、長野県北信地域での最新の取り組みをご紹介します。
豪雪地では「太陽光は無理」と思われがちですが、実は少しずつ状況が変わってきています。
きっかけは、長野県発行の「雪国・住宅太陽光発電ガイドブック」
このブログの元になっているのは、2025年3月に長野県北信地域振興局が発行した『雪国・住宅太陽光発電ガイドブック』という資料です(発行者:長野県北信地域振興局)。
このガイドブックは「積雪量が2mを超えるような地域でも、太陽光発電は本当に無理なのか?」という疑問から始まった実証実験の成果をまとめたものです。
たとえば、長野県飯山市や野沢温泉村などでは、屋根ではなく外壁や地上にモジュールを設置することで、冬でも安定した発電を実現している事例が紹介されています。
なぜ「雪国×太陽光」なのか?
冬季に暖房費がかさむ雪国では、電気使用量が多くなりがちです。実際、北信地域の一人当たりの温室効果ガス排出量は、首都圏の約1.5倍というデータもあります。
加えて、エネルギー価格の上昇や円安の影響もあり、自家消費できる再生可能エネルギーの導入は経済的にも合理的とされています。
課題は「積雪荷重」だが、工夫次第でクリア可能に
豪雪地で太陽光が普及しにくかった最大の理由は、モジュールが積雪に耐えられないことでした。積雪深2.5mでは、雪の重みが600kg~1,250kg/㎡以上になることもあります。
しかしガイドブックでは、屋根ではなく60度以上の角度で壁面や地上に設置する方法(いわゆる「雪をいなす発想」)を取り入れることで、これを解決できると報告されています。
実際の設置例:3つの方法
ガイドブックでは、以下のような具体的な工法が紹介されています。
1. 壁面設置
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垂直に近い外壁にモジュールを取り付けることで、雪が積もらず自然に落ちる。
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降雪中でも発電を継続できた事例あり。
2. 急斜度屋根(60度以上)
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雪が滑り落ちる角度に屋根を設計し、モジュールを設置。
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自然滑雪によりメンテナンスの手間も軽減。
3. ソーラーシェアリング(敷地設置型)
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高さ3m以上の架台に設置し、下を家庭菜園や駐車場として利用。
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日照も確保できて一石二鳥。
冬こそ発電チャンス?「雪国太陽光」の実力
冬は太陽の位置が低いため、60度の角度で設置されたモジュールには直角に近い角度で日光が当たりやすくなります。加えて、積もった雪が反射板のような役割を果たす「ダブルサン効果」によって、想定以上の発電量を記録する例も出ています。
たとえば、飯山市の事例では、通常の屋根設置と比べて1月の発電量が1.4倍になったという結果も掲載されています。
実際どのくらい設置できるのか?
長野県北信地域で行われた住宅調査(調査棟数985棟)では、以下のような結果が出たそうです。
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壁面または急斜度屋根での設置が可能な住宅:全体の約51%
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敷地内設置(ソーラーシェアリング)まで含めると:約81%の住宅で導入可能と判断
これは、豪雪地でもかなり多くの住宅に太陽光発電が導入可能であることを示しています。
まとめ:雪国でもあきらめる必要はない
「雪国では太陽光発電は無理」とあきらめるのではなく、設置場所や角度、設計方法を工夫することで、雪国ならではのスタイルでの発電が可能になります。
このような先進的な取り組みが少しずつ広まりつつあり、今後さらに注目される分野になりそうです。
出典・参考資料
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『雪国・住宅太陽光発電ガイドブック(2025年版)』
発行:長野県北信地域振興局
制作:公益社団法人長野県建築士会
写真・イラスト:一般社団法人太陽光生活研究所
https://solarpoweredlife.jp/
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